遺産分割協議書のための特別代理人の選任

(2022年3月21日更新)

遺産分割協議書をするにあたり、未成年者は「制限行為能力者」とされています。

民法第20条第1条(制限行為能力者の相手方の催告権)の条文
1 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた 被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者 (行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを 確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。


このため贈与を受けたり、不動産の購入売買したり、会社の取締役(会社法第331条)などになる場合、
「未成年者の場合は親権者の同意」を得て、こうした法律行為を行います。


例えば未成年者への贈与などの登記の場合、捺印するのは親権者ですし、親権者を証する書面として戸籍を添付したりします。

被相続人の死亡により、相続が発生した場合、遺言書が無い場合は原則として遺産分割協議を行います。


この遺産分割協議については、法律的な判断を含む法律行為にあたります。
このため制限行為能力とされる、未成年者が単独ですることはできません。

 

遺産分割協議書における特別代理人の選任

ただ遺産分割協議においては、親権者も遺産分割協議書に参加する事が多い点です。

例えば父が亡くなり、母と子供1名(未成年)が相続人となる場合です。
この場合、母と子供1名(未成年)は利益相反となります。

未成年者のための特別代理人選任が必要となるのは、親権者も未成年者とともに相続人であるようなケースです。
子供が未成年の場合、親権者は母になりますが、母が子供を代理した場合、遺産分割協議は未成年の子と、親権者の母の実質一人ですることになるので、相反するいわゆる利益相反行為と見なされてしまいます。

この場合、母に代わる未成年の特別代理人の選任を家庭裁判所へ申し立てることになります。
特別代理人は恒久的に付くものでなく、遺産分割協議書のみに対しての、いわゆるピンチヒッター的なものです。
弁護士や司法書士などの専門職が就く場合もありますし、例えば親権者の母の父や母、つまり祖父や、叔父叔母などがなる場合もあります。


特別代理人を選任する際は、一般的な戸籍等の他に、遺産分割協議書の原案を添付する事が多くあります。
子供が小さい場合、全て親権者の母にするような遺産分割協議書を添付する事も多くありますが、これは裁判所から「待った」がかかることが多いです。
特別代理人は、あくまで「子の利益」を守るためのものですので、母と子供1名(未成年)の遺産分割協議書の場合、母と子供1名(未成年)で等分にすることを求められるケースが多いです。

不動産のみなどの場合、不動産は母名義で、その半額にあたる対価を子に代償金として支払うケースで遺産分割協議書を作成する事が多いです。

稀なケースかもしれませんが、子がとても幼く(5歳未満)、実質的にお金の管理などができる訳がないですので、母が全財産を取得しますが、その代わり子の教育や福祉や、養育に全て責任もって使う事を制約し、全財産を母とする遺産分割協議書で特別代理人として選任してもらったケースもあります。

というのも、相続税がかかるようなケースの場合、配偶者である母(故人の妻)は1億6000万円まで非課税で相続財産を取得できるのに対し、子供が相続した金銭対価(代償金など)については、課税されることもあります(相続税には未成年者控除もあります)ので、相続税を検討すると、全て母が相続した方が良いケースも散見されるからです。

相続税の未成年者控除については、国税庁の下記のページを参照してください。

 

国税庁 : 未成年者の税額控除

 


この辺りまで家庭裁判所では考慮してくれるわけではないので、詳しくは事情を説明して、納得のいく方法での遺産分割協議を求める他ありません。


また今年2022年4月より、民法が改正され成人の年齢が引き下げられます。

 

国税庁 : 民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について

 

このため、もし相続人に17歳程の未成年者がいる場合、未成年者が成年(18歳)に達するまで遺産分割協議をするのを待つ選択もあるかもしれません。
17歳で十分に判断能力はあるかは不明ですが、遺産分割協議についての選択肢の一つになります。

ただ相続税の申告期限(10か月)がある場合は、この方法は使えませんし、
15歳などで成人するまでに3年などの長い時間がかかる場合、再来年の2024年(令和6年)から義務化される相続登記の懈怠となり、それにより更なるトラブルになる可能性もありますので、けしておすすめができる方法ではありません。

⇒相続登記の義務化については下記をご参照ください。

<相続に関する時事ニュース> 相続での不動産登記が義務化 | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)


あくまであと数か月で18歳、というような場合のみ、検討すべきケースと言えるでしょう。

 

司法書士法人近藤事務所では、特別代理人選任申立ての書類作成のご相談にも個別に対応させていただきます。

ご予約専用ダイヤルは0120-926-680になります。
横浜の相続まるごとお任せサービス~横浜で相続・遺産整理なら (yokohama-isan.com)
土曜・日曜・祝日の面談をご希望の場合はご相談ください。

 

このページの執筆者 司法書士 近藤 崇

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。


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