<コラム> デジタル遺産 ~税務署は把握していたアプリの中の相続財産

デジタル時代の到来により、私たちの財産は形のないデジタル資産が多く占めるようになりました。手軽なネットバンキングや証券口座での金融取引は着実に増加しており、デジタル遺産を相続する機会が増えるのは間違いないでしょう。銀行も通帳のペーパーレス化を進めており、口座のデジタル化の流れは、さらに加速するものと思われます。

相続の場面においても、これまでの紙の通帳であれば、通帳が発見されることで、口座のそのものも発見できることがあります。しかし、パソコンやスマートフォンの中でのみ把握できるデジタル口座の場合はそうはいきません。今回はこの数年に流行しだしたあるデジタル口座を巡って、東奔西走した相続人のケースをお伝えします。

 

 【事例】

▽父が亡くなり遺品整理に追われる息子たち

40代Aさんたち兄弟は昨年父を亡くしました。父は母が亡くなったのを機に、首都圏郊外の一戸建てを処分し、関東地方の別荘地を購入しました。温泉付きの別荘で暮らし、趣味の釣りに没頭するのが夢だった父にとっては、夢のような晩年だったのかもしれません。そんな父が終の棲家であった別荘地で急死してしまいました。Aさんは、私ども司法書士とともに相続財産の整理を行うことになりました。

 

相続関係としては、被相続人である父(以下、被相続人)に対し、長男Aさんと二男のBさん。基礎控除は4200万円となります。相続財産がこの額以下の場合、相続税の申告の必要はありません。

概ねの相続財産としては、

  • 終の棲家であった別荘地
  • 銀行預金 
  • 証券会社口座の3つです。

1つめの不動産については、温泉の権利のついた別荘地の土地建物ですが、地方のため路線価評価はけして高くなく、路線価評価では1000万円を切る程度でした。②の銀行預金は1000万円超程度。③の証券口座は、晩年暇を持て余していたのでしょうか、被相続人の釣り並ぶ趣味だったデイトレード用の口座です。これがやはり1000万円強程度ありました。株式投資はお世辞にも上手かったとは言えないようで、損益計算はかなりのマイナス状態です。ネット系の大手の証券会社の口座ですが、これは郵送物などからすぐに把握することができました。

別荘地は売却に時間が掛かりそうなため、長男Aさんが相続、その他の金融財産はきょうだい2名で等分にする方向で遺産分割協議を進めていました。すると被相続人が亡くなってから6か月くらい経過した際、別荘地を管轄する税務署から、郵送物が届きました。

 

【続く】

 

このページの執筆者 司法書士 近藤 崇

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。


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