相談例36 なぜ子供のいない方の相続手続きは難しいのか?⑦
子供がいない世帯が増えていることは前回の投稿でも指摘しました。これは別に悪い側面ばかりではないし、結婚をしなくてもいい自由、子供を持つ、持たないの選択の自由があるとも言えます。
またこの流れは日本社会全体の流れですし、世界的にも先進国では少子化が進んでいるといわれますので仕方がないと言えるでしょう。
問題は、亡くなられた後に発生します。
子供が無い夫婦の場合、よくトラブルとなるのは、「自宅不動産」についてです。
例えば、子のいない夫婦の夫が亡くなった場合、「遺言が無い場合、夫の兄弟姉妹、また兄弟姉妹が死亡していても甥姪がいれば、法定相続人は妻・4分の3、夫の兄弟姉妹甥姪の合計でて4分の1となります。
妻と夫の兄弟姉妹や甥姪とで、夫の遺産をどのように分けるか話し合いをする必要があります。
特に妻と夫の兄弟との関係が良好ではない場合、話し合いが難航する可能性があります。
妻や夫とは長年連れ添ったとはいえ、その兄弟姉妹や甥姪と、日常的に交流を持っている人は多くないでしょう。むしろ少数派ではないでしょうか。今まで交流のなかった方々同士で、大人数で財産の分け方の話し合いをするというのは、気が重くなる話かと思います。
法定相続分どおりに被相続人の遺産を分割すればいいので簡単ではないか、と思われるかもしれません。
ですが妻にとっての自宅について、法定相続分で夫の兄弟姉妹の持分を相続登記をしても、本質的な問題解決にはなりません。いざという時(例えば自宅を売却して老人ホームに入居する費用に充てたい)に、売却もままならないでしょう。
では、持分を放棄してもらう代わりに、夫の兄弟姉妹に代償金を払うケースもあります。
しかし自宅の評価額をいくらにするのか、簡単に遺産分割協議がまとまらないケースもあります。
自宅は文字通り今現在、残された妻が住んでいる不動産です。不動産は実際に売却すれば、現金価値は明確に表せます。
しかし、自宅であるが故に売却ができません。自宅の評価額につていは固定資産税の評価額とするのか、どうするのか、机上の査定により様々でしょう。
被相続人の死亡までに、被相続人の預貯金を介護や病院代などで使ってしまっているケースもあります。分け合える預貯金が無く、相続財産が自宅しかないようなケースで遺産分割調停になるケースが多くみられます。
遺産分割の調停事件では、遺産総額が5000万以下のケースが全体の4分の3(約75%)を占めています。
出典:裁判所ホームページ:司法統計年報家事事件編(平成30年度)
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/738/010738.pdf
横浜市や川崎市など、自宅不動産の価値が数千万円するケースでは、その財産の中で自宅不動産が占める高い割合のケースも多いでしょう。
要は「総財産の多い・少ない」ではなく、「可分出来る財産の多い・少ない」が相続を面倒にするか否かで大きなポイントとなっています。
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