相談例105 特別縁故者の申立てをすれば相続人でなくとも相続財産の受領は可能ですか?

前回相談をした、横浜市の者です。

同じ横浜市に相続人がいない60代の従兄弟がおり、従兄弟は今年定年退職しましたが、仕事人間なこともあり、生涯独身でした。なんだかんだで従兄弟の日常の世話や入院時の保証人などを頼まれ、こうしたことも嫌な顔ひとつせず、こなしてきました。


先般、この従兄弟が死亡しました。法定相続人は0人で全くおらず、遺言書ははありません。

前回の相談で教えてもらった特別縁故者の申立てなどをすれば、相続財産を受け取る事はできますか?

相談例104 相続人不在なら従兄弟の私が相続できますか? | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)

 

【回答】

1 被相続人と生計を同じくしていた者(生計同一者)

 

生計を同じくしていた者とは、「同一家計で生活をしていた者」のことです。

最近増えていますが、長年同居して内縁関係にあった実質的なパートナーにあたる人などの事です。被相続人と同居をしていたか、また「生計同一性があったか」などがポイントです。

どこまで血縁上・戸籍上の家族に近いかが判断基準といえるでしょう。

 

2 亡くなった人の療養看護につとめた人物


療養看護とは、被相続人の看病看護、老後の世話などを献身的に行ってきた人のことをいいます。
例えば従兄弟や先に死亡した子の妻、などのといった法定相続人ではない人が典型例です。

3 その他被相続人と特別の縁故があった人物


① ②のケース以外にも、亡くなった人が生前から「財産を譲り受けると周囲に話していた相手や、
家族同然の生活を続けていた人、若しくは法定相続人ではないのにも関わらず、親や兄弟同然に被相続人の世話をしたり、被相続人の財産の保全や増加につとめた者の事です。

 

特別縁故者に対する相続財産分与 | 裁判所 (courts.go.jp)


内縁配偶者が特別縁故者と認められた例としては、20年以上の内縁関係があり、ともに住んでいた居住用不動産の分与を受けたケース。
また外国籍の被相続人と婚姻せずに子を6人もうけたが被相続人から認知がされていなかったため、相続人が不在となったケースなどが判例として存在します。

また事実上の養子が特別縁故者と認められ、相続財産の分与を受けた判例などが存在します。


一方で、特別縁故者として認められるのが難しいケースとしては、「死後の様々な事務を行った者」などです。
特別縁故者と認められるには財産分与を希望する人と亡くなった人との間に、生前から一定以上の関係があることが基本的な前提になるといえます。例えば亡くなった人の葬儀を執り行い、「葬儀・埋葬の費用を負担した」場合でも、生前の関係が全くないのであれば、特別縁故者として財産分与を認めてもらうのは難しいでしょう。

 

ただこの場合においても、相続財産清算人の選任を申し立てて、相続財産清算人か葬儀・埋葬費用などの立替えた費用を支払ってもらう程度は可能でしょう。こうした相続財産清算人の選任手続きの費用程度も、通常相続財産清算人の方から支払い許可を得る事も可能な場合が多いです。

 

結論として、確実に相続財産を受け継ぐ必要があり、かつ財産を持つ本人の意思もそうであるならば、遺言書(公正証書遺言)を残すのが最も安価で効率的なことを言うまでもありません。

司法書士法人近藤事務所では遺言書の作成サービスも承っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

遺言サポートサービス|司法書士法人 近藤事務所 (yokohama-isan.com)

 

 

このページの執筆者 司法書士 近藤 崇

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。

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