相談例102 法定後見制度と任意後見制度の違いについて教えてください②
横浜市に住む40代女性です。
神奈川県内で離れて1人で暮らす父が、最近ごく軽い認知症の傾向があると医師から告げられました。
現時点では殆ど兆候はないのですが、成年後見制度について調べています。
その中で「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つがあることが分かりました。
法定後見制度と任意後見制度の違いについて教えてください。
(前回の相談)
相談例101 法定後見制度と任意後見制度の違いについて教えてください① | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)
【回答】
ご相談ありがとうございます。この2つは良く質問を受けますが、同じ後見でもその内容はだいぶ違う点もあります。
基本的には、法定後見制度では,家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)を選任し,その権限も基本的に法律で定められています。
一報、任意後見制度では,本人が任意後見人となる方やその権限、報酬をを自分で決めることができるという違いがあります。前回に引き続き、相違点をあげていきます。
【後見人の報酬額】
法定後見人は、必要に応じて家庭裁判所に報酬を請求することができます。概ね年に1度程度、家庭裁判所に対して成年後見人が報酬付与の申立てをします。
家族が後見人に選任された場合は、報酬を請求しないこともできます。
成年後見の報酬額は法定後見の場合、自分たちで決めれるわけではなく、全て家庭裁判所が金額も判断します。
概ね財産額が5000万円くらいまでの場合、報酬は月額で3万円程度が一般的のようです。
任意後見の場合、後見人の報酬額は公正証書で作成した任意後見契約で予め決めて記載する必要があります。親族が任意後見人の候補者になる場合は、報酬額が無しでも構いません。
判断能力が充分なうちに予め行う契約のため、報酬も事前に決める事が可能なのです。
【申立てをすることができる人】
法定の成年後見人選任の申立てを行う事ができるのは、本人,配偶者,四親等内の親族,検察官,市町村長などです。一般的には親族の申立てが多いのではないでしょうか。
任意後見については任意後見監督人の選任申立を、本人・配偶者・4親等内の親族の他、任意後見契約の受任者以外に行うことができます(任意後見契約に関する法律第4条1項)。
本人の判断能力が低下しているにもかかわらず任意後見監督人選任申立を行わないような場合には、法定後見(補助・保佐・後見)開始審判の申立を行うこと可能ですが、その後に任意後見監督人選任申立がなされると、原則として法定後見開始審判は取り消されてしまいます。
また一旦契約を交わした任意後見契約の解除するためには、この解除についても公正証書で行う必要があります。)。
【後見監督人等の選任】
必要に応じて家庭裁判所の判断で選任されます。一般的に財産が高額な事案や困難な事案や、親族間で対立があったり、親族による使い込みが疑われる場合などは、後見監督人がつくケースが多いように思われます。
対して任意後見契約の場合、その任意後見契約が発行された場合、後見人が専門職であろうとなかろうと、全てにおいて任意後見監督人が選任されます。この点、任意後見監督人については専門職が選任されることが通常ですので、この費用も掛かってしまう事にも留意が必要です。
成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A | 成年後見制度・成年後見登記制度 (moj.go.jp)
~次回に続きます~
このページの執筆者 司法書士 近藤 崇
司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi
横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。
取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。
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