相談例97 相続した不要な農地を処分したいです
昨年横浜市に住む父が死亡しました。
相続する横浜市の不動産の他に、父の実家のある相模原市の300㎡ほどの農地があります。
父のかつての実家や本籍がある土地で、父の父、つまり祖父が相続した際に、いわゆる田分けとして父の8人兄弟全員全員で少しずつもらった土地のようです。
私たちは相続放棄をするわけにもいかないので、母にこの農地は母に相続してもらいました。
私たちはこの土地は使いませんので、相続したくないですし、絶対に私たちの子供にも継がせたくはありません。
この農地をさっさと処分したいのですが、どのような問題がありますか?
【回答】
土地の相続は相続人にとって必ずしも欲しいとばかりいえるものではなくなってきました。
相続する土地の種類によっては、相続人にとってむしろ負の資産となる可能性もあります。
マイナスの資産を相続し不利益は何が考えられるでしょうか。
<市街化調整区域の農地>
ここでいう農地とは、登記簿上の登記地目が「田」・「畑」のものをいいます。
農地のままでは実態のある農家にしか売却することができず、また農地以外の転用を行う場合も農業委員会の許可を得なくてはなりません。
昭和20年代に作られた農地法の観点として、農家を減らしたくないため、農家をやる気のない人に農地を転売を防ごうという趣旨があります。そのため農地法で、農地の売却について規制しています。
上記のような市街化調整区域の農地を売却等する場合は、農地法と都市計画法の両方の規制を受けるため、売買しづらい物件です。
「市街化区域」は人が住みやすくなるような市街地形成の計画のために、用途地域に基づいて建物が建てられ、都市基盤やインフラの整備が行われています。
一方で、「市街化調整区域」は山林や田畑を保全するために開発が規制されています。都市施設の整備も原則行われません。
市街地調整区域の土地は、近隣の市街化区域の土地と比べると、固定資産税評価でもかなり評価が低くなっています。
また市街化調整区域内ではインフラの整備も積極的に推進されていないため、
住居を建てる時には、水道や電気の引き込み工事が必要になることがあります。
<農地法第3条の壁>
農地法第3条が適用される場面は、「農地等」について所有権移転などの売買や贈与をする場合です。
例えば、農業を行なうために、農地を購入、あるいは賃借する場合に、農地法第3条の許可が必要となります。
原則としてこの農地法3条の許可は、農地所在地の農業委員会の許可が必要です。
農地法第4条、及び第5条の許可権者は都道府県知事等であり、許可権者が他の場合と異なります。
さて、農地を農地のまま転用する「農地法第3条の許可」ですが、何が最も面倒なのでしょうか?
「農地法3条の許可 : 横浜市の場合」
<受け手に農家の資格があるか?>
ここで良く問題になるのは、貰う側が「農家」として適格かどうか、どのように農業委員会が判断するのかという点です。
この要件が厳しいため、農地法第3条の許可申請は概ね断念してしまいます。
例えば神奈川県相模原市の場合などですと、受け継ぐ農家の方には既に2000㎡(今回受け継ぐ農地も含めて)ほどの耕作地を有していることなどが農家としての適格判断の要件に含まれてきます。
つまり「農地を取得する親戚が少しだけ家庭菜園をやっている」程度の場合、農業委員会が農地法第3条の許可を出してくれない可能性が高いと言えます。
またこの他にも、農作業常時従事要件や全部効率利用要件などの様々な的確要件があります。
このような土地の相続には、身近の行政書士や司法書士にご相談された方が良いかと思います。
このページの執筆者 司法書士 近藤 崇
司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi
横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。
取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。
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