<相続に関する時事ニュース> 相続での不動産登記が義務化
相続に関する時事ニュースで、気になるものが出てきましたので、取り上げておきます。
2024年(令和4年)4月から土地・建物の相続での不動産登記が義務化となります。
改正民法・不動産登記法と、新設される(令和5年4月27日施行)があります。
以下、日経新聞記事からの引用です。
日本経済新聞 : 遺産争い長期化にリスク 登記義務、施行前の相続も
施行を控えるのは改正民法・不動産登記法と相続土地国庫帰属法。21年末に具体的な施行日がそれぞれ決まった。改正民法は23年4月1日の施行で、遺産分割協議に期間を設ける。現在は法律上の期限がないが、相続開始から10年を過ぎると原則、民法で決まっている法定相続割合で分けるようにする。新法の相続土地国庫帰属法は23年4月27日に施行され、相続で取得した一定の要件を満たす土地を国が引き取る。
改正不動産登記法は24年4月1日に施行し土地・建物の相続登記を義務付ける。土地・建物を相続する場合は「だれが、どれだけ相続するか」を登記するが、現在は任意で期限も決まっていない。
改正によって相続開始から3年以内に登記する義務を課し、登記しないと10万円以下の過料となる。
重要なのは今回の法改正や新法が施行日前に発生した相続も対象にする点だ。何かを義務付けたり、違反者に過料を科したりする法律は通常、施行日から遡って適用することはしない。
今回についてはすでに起きている相続案件を含めないと、「所有者不明土地の発生を防ぐ効果が薄れると判断した」と法務省では説明する。
ただ施行する制度によっては適用の猶予期間を設けているものもある。相続発生時期による手続き期日の目安をみていこう。まず多くの人に影響があるのが相続登記の義務化だ。
相続の発生が24年4月1日以降なら、発生から3年以内が期日となる。
もっとも、相続人自身が重病で申請できなかったりするなどやむを得ない場合は過料が科されない。また期限に間に合わないなら、新設する相続人申告登記制度の利用を考えたい。
相続人の住所、氏名などを申し出れば、相続開始から3年が過ぎても過料の対象にならず、登録免許税も非課税だ。
遺産分割協議の改正では、施行日より前に発生した相続を対象に5年間の猶予を置き、28年3月末が期日の目安になる。例えば施行日時点で相続発生からすでに10年が過ぎているケースなどだ。
ただ10年経過する日が28年4月1日以降になる場合は、発生日から原則10年間が期間となる。
親の土地や家の立地条件が悪かったりして相続人で受け継ぐ人がいなければ、相続土地国庫帰属法の利用が選択肢だ。相続の発生時期にかかわらず、施行日から引き取りを申請できる。
「建物がない」「境界争いなどがない」などの要件を満たす必要がある。承認されると管理のための10年分の負担金を納めなければならないことも知っておきたい。
この記事の要点は2点です。
まず相続登記の義務化がなされるということ。
相続登記の義務化
今回決定した、「相続登記の義務化」により、不動産を相続で取得したときは 不動産所有者(被相続人)の法定相続人が、自分が不動産を相続した事を知ってから、3年以内に相続登記する事が義務付けられます。
正当な理由なく怠れば、最大10万円の過料が科される事になります。
また所有者が引っ越しなどで住所変更した際も、同じく義務化となり2年以内に手続きをしなければ、最大5万円の過料の対象になります。
今回のポイントとして重要なのは、通常は法律は施行日の前に遡って適応されることはないのですが、今回の法改正や新法が施行日前に既に発生している相続も対象にする点です。
通常は恣意的な罰則に繋がるため、法律は通常、施行日から遡って適用することはしません。
昨日までは適法だったものが、突然に過料などの罰則事項になるからです。
今回の法改正では、施工日に既に発生していた相続についても、遡って法律を適応させるというものなので、裁判などの手続きをしないまでも、膠着している遺産分割協議を促進したりしたいという国の本気度合いが垣間見えます。
相続土地国庫帰属法の新設
相続土地国庫帰属法は、相続登記等が未登記のままなされないなどの理由で、所有者が不明土地の発生を抑制するため、相続または遺贈により土地の所有権を取得した相続人が、土地を国庫に帰属することを可能にする制度です。
但し、相続した土地ならば、何でも国に返せるという訳ではなく、以下のようなかなり厳しい要件が定められています。
- 1.建物が存する土地
- 2.担保権や用益権が設定されている土地
- 3.通路など他人によって使用されている土地(地役権など)
- 4.土壌汚染がある土地(土壌汚染対策法などの対象土地かと思われます)
- 5.境界不明など権利関係に争いがある土地(境界未確定の土地)
- 6.管理するのに困難な崖がある土地
- 7.樹木や工作物などが地上に存在する土地
- 8.除去必要な埋設物が地下に存在する土地
- 9.隣地所有者と争訟をしなければ使えない土地
- 10.以上に定めるほか管理するのに過分の費用・労力を要する土地
要は国が「コストに見合わない」と判断した土地は、いくら所有者が不要だと思っても、この制度を使い国に土地を引き取ってもらうことは困難だということです。
国側の判断要素が曖昧ですし、要件自体としてもかなり厳しいと言えます。
制度は作ったものの、使い勝手が悪い制度は実際の利用件数があまり伸びない事もありますが、この制度の利用件数は果たしてどうなるでしょうか。注目されます。
このページの執筆者 司法書士 近藤 崇
司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi
横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。
取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。
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