相談例91 (相続全般)⑤ 夫婦間の贈与に関する特例2

横浜市在住の60代の夫婦です。

長らく夫の実家の敷地内の家に住んでいたのですが、夫の実家の相続も終わったのを機に、自宅として新たに横浜市内のマンションを購入する事になりました。

購入するのは、相続対策も考えて広めの高層マンションを考えております。

夫は会社を経営しており、既に他の不動産や金融資産などで、2億円程度の資産があります。

私は子育てに専念していた専業主婦が長かったため、財産らしい財産は2千万円程度の預貯金のみです。

この場合、将来の相続対策として、土地の購入にあたり有用なことはあるでしょうか?

尚、子供が3人いますが、長男は独身で、私たち夫婦と同居しています。

司法書士の方、教えてください。

 

【回答】

前回説明した「夫婦間住宅取得資金贈与(結婚してから20年経過した夫婦の間での2000万までの非課税贈与)」では、マンションや戸建てなどの住宅購入の資金について、適応する事も可能です。

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

夫婦間の贈与に関する特例

この場合、注意すべき点は、予め持分を「正確に登記」しておくことです。

つまりマンションの購入額を1億円とした場合

・夫の持分は10分の8(1億分の8000万)

・妻の持分は10分の2(1億分の2000万)
 *夫から贈与を受けた持分をそのまま購入代金に充当 
  諸経費は考慮せず

となります。

不動産の購入時において、共有持分の割合は極めて重要で、司法書士はとても気を使います。
登記簿の記録は誰もが閲覧できますし、課税当局としても極めて重要視する点です。

今回は「夫 → 妻」に対しての2000万円のお金の流れが説明でき、これをかつ無税で移せるので
仮になんの権限も理由もなく、単に妻分の2000万円の不動産持分を夫が負担した場合、
これは税務当局としては「贈与」と見なされ、贈与税の課税対象となるでしょう。

 


今回のケースの場合、既に相談者様の夫は相続税の配偶者控除の上限である1億6000万円を超える額の資産をお持ちですし、この財産の一部を配偶者である夫から、相談者である妻に無税で移せます。

またそもそも夫婦間で贈与登記をする登録免許税(25万程度)もかかりませんので、
この制度を使う効果は高く、相続対策として有用で効率的といえます。

 

他方、ご主人が亡くなった際に、妻の持分部分には、小規模宅地の特例(特定居住用宅地等)が使えない(適応される部分が少ない)というデメリットもあると思います。

この制度は、被相続人が死亡時の自宅を、同居の親族や、同居の親族がいない場合、自己または自己の配偶者や親族が所有する家がない相続人が相続する場合には、この制度が適用される可能性があります。

仮にご主人が先に亡くなった場合、夫のマンション持分を妻が相続し、遺言書等を残して確実に同居の長男に相続させることができるならば、妻の死亡時にこの制度を用いる事が出来ます。

またそもそもタワーマンションの場合、現状では「市価」と「相続税評価額」の剥離も大きいため、この時点で相続財産の圧縮という意味で、節税効果を享受しているとも言えます。

不幸な例えですが、仮に妻である相談者様が亡くなられたとしても、現状の相続財産としては、既にお持ちの預貯金2000万円と、今回贈与を受ける不動産の価値2000万円程度ですので、そもそも相続税の基礎控除(この場合、妻と子供4800万円以下)の範囲内に収まる可能性が高いと言えます。


このため今回のケースでは、夫婦間の贈与に関する特例を用いる事は、有用な対策といえるでしょう。

 

 

司法書士法人近藤事務所では、夫婦間の贈与登記のご相談にも個別に対応させていただきます。

ご予約専用ダイヤルは0120-926-680になります。
横浜の相続まるごとお任せサービス~横浜で相続・遺産整理なら (yokohama-isan.com)
土曜・日曜・祝日の面談をご希望の場合はご相談ください。

 

 

 

このページの執筆者 司法書士 近藤 崇

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。

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