相談例75 (相続/不動産登記)⑬遺言書で不動産の遺贈(寄付)を命じられました

横浜市に住む叔父が死亡し、相続が発生しました。

叔父にはそれなりの資産がありましたが、叔父には子供がいなかったため、公正証書遺言を残していました。

その遺言の内容は次のようなものでした。

「私の全ての預貯金や、横浜市内の自宅不動産など、全ての財産を換価して、債務や税金や手数料を支払ったあと、
 残ったお金の半額を甥(である相談者)に相続させ、残りの半額を公共団体に遺贈する

と書いてありました。

遺言執行者としては甥である私が指定されています。

預貯金の方はなんとなくイメージができるのですが、不動産はどうやって換価して、遺贈すればいいのでしょうか?
全く分かりません。

【回答】

遺言者である叔父様は、不動産をお持ちとのことですので、この遺言書の問題点は、
不動産の相続(遺贈)登記、また売却による所有権移転登記などの手続きが問題かと思われます。

最近、弊所で遺言作成を行う方も、市区町村やNPO法人などに遺贈による寄付などを検討される方が多くいらっしゃいます。

日本ユニセフなどでも、遺贈による寄付を受け付ける広告なども見られます。

日本ユニセフ協会 | 遺言によるご寄付(遺贈) (unicef.or.jp)

認定NPO法人横浜こどもホスピスプロジェクト (childrenshospice.yokohama)

 

さて今回のケースではそもそも相続登記も、売却の登記をする時もは、遺言者である叔父様は既に亡くなっています。

不動産を売却したときの所有権移転登記は死亡時の方の名義のままでは不可能です。

売主の印鑑証明書なども当然に出ることはないからです。

亡くなった人は、印鑑証明書の発行もできないためです。

つまり、亡くなった人から、いったん誰かに名義を移して、売却の所有権移転登記をしなければいけません。


すくなくとも相談者様は甥で、法定相続人と思われます。
このため相続人が不存在となるケースではなく、法定相続人がいるケースならば、
一旦は相続人に法定相続分どおりいったん相続させることが可能と思われます。

この法定相続による相続登記は、遺言執行者のみにより、登記申請できると考えられます。
これは従前からも同様の手法が登記実務では使われていましたが、今回の民法改正により遺言執行者は相続人から完全に独立した遺言を実現するため機関とされたため、よりはっきりとしたのではないでしょうか。


【改正民法1012条2項】
遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。


一旦、法定相続人全員により、法定相続分による相続登記をした上で、遺言執行者が全ての相続人の登記識別情報を受領します。
その上で、遺言執行者が遺贈のための換価手続きのための売却をすれば良いと解されます。この場合、遺贈のための売却をするための登記義務者は遺言執行者となります。


法定相続人が仮に1人も存在しない「相続人不存在」の場合、相続財産清算人を裁判所に選任してもらった上での「亡き叔父様名義の相続財産法人」名義での相続登記が検討されます。

原則として、相続財産清算人を裁判所に選任してもらった上での手続となりますが、この手続きはかなり煩雑なうえ、1年ほどの期間もかかります。このため可能ならば、避けたいケースとなりますが、避けるためにはどのようにすればいいか、またの機会にご説明したいと思います。

 

 

 

司法書士法人近藤事務所では、遺贈や相続登記のご相談にも個別に対応させていただきます。
ご予約専用ダイヤルは0120-926-680になります。

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