相談例41 (遺言書/相続)実際にあった遺言書の文例①
弊所で取り扱った遺言の相続案件において、実際にあった遺言書の文例について解説していきます。
自筆証書遺言については、弁護士、司法書士などの専門家の目を通さずに作成されることが大半です。また公正証書遺言ならば公証人の目を通しますが、そのプロセスもありません。
よって、自筆証書遺言に基づく相続手続きついては、司法書士である私たちも頭を悩ませるような文面に直面する事が、多く見られます。
例えば「相続」と「遺贈」について、厳密に使い分けている遺言書もけして多くはありません。原則としては「相続」と遺言に記載するのは、法定相続人に対して財産を取得させる場合に用います。対して、法定相続人以外に財産を贈与するには、「遺贈」と遺言に記載します。
- ★「法定相続人の1人」に対し、「相続人何某に相続する」と書かれてある場合
当然、不動産登記上での登記原因は原則として「相続」となります。
では下記のような場合はどうでしょうか
- ★「法定相続人の1人」に対し、「相続人何某に遺贈する」と書かれてある場合
相続人に対してでも「遺贈する」との文言が使われている場合には、不動産登記上での登記原因は原則として「遺贈」となります。
*相続人全員に対して格別に「後記物件を遺贈する」旨の記載がある公正証書遺言に基づく所有権移転の登記原因は「遺贈」とするのが相当である。(昭和58年10月17日民三第5987第三課長回答)
たいした違いではないと思われるかもしれませんが、不動産登記上は大きな違いとなります。登記原因が相続であれば、相続人からの単独登記申請となります。これに対し、遺贈の場合には、遺言執行者または相続人全員を登記義務者として共同で登記申請をしなければなりません。
共同申請の場合、義務者の印鑑証明書が必要です。子供のいない方の相続などで、法定相続人が多い場合、かなりの困難が予想されます。また共同申請なので、亡くなられた方の権利書(登記識別情報)が必要となります。
遺言については、基本的に「相続」「遺贈」の文言を間違えていても、読み替えてもらえることが多いです。しかし、その遺言を不動産登記の名義の書き換えに用いる際の手続きについて、大きな差異が生じます。
ただし例外として、相続財産の全部を包括名義で贈与する遺言で、処分を受ける者が相続人の全員である場合には、不動産の登記原因すらも読み替えて、「相続」を登記原因として所有権移転登記をします。
被相続人が相続人に対し相続財産の全部を包括名義で贈与する旨の遺言があるときは、その処分を受ける者が相続人の全員である場合には、その所有権移転の登記は、相続を登記原因としてなすべきである。(*昭和38年11月20日民事甲第3119号・民事局長回答)
登記原因すらも読み替えてくれるとなると、上記の先例くらいでしょうか。
せっかく遺言を作成するのならば、この辺りまで考えて遺言を作成してみたいですね。
(続く)
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