相談例106 特別縁故者として被相続人の不動産を取得するにはどんな手続きが必要ですか?

横浜市に相続人がいない60代の従兄弟がおり、従兄弟は2年前に死亡しました。

前回の相談で教えてもらった特別縁故者の申立てをして、家庭裁判所から特別縁故者として認められ、従兄弟が所有していた横浜市内の自宅マンションを受け取っていいと許可が出た場合、これらの登記名義を変更する事はできますか?

相談例105 特別縁故者の申立てをすれば相続人でなくとも相続財産の受領は可能ですか? | 横浜の相続丸ごとお任せサービス (yokohama-isan.com)

またどのような登記手続きが必要になるのでしょうか??

 

【回答】

 

被相続人が自宅などの不動産を所有しており、家庭裁判所にて特別縁故者に対して、被相続人の不動産の分与が認められた場合、次のように不動産登記を進めます。


1件目・・・相続財産への所有権登記名義人氏名変更登記
2件目・・・特別縁故者に対する所有権移転登記

 

1件目・・・相続財産への所有権登記名義人氏名変更登記 
登記の目的 所有権登記名義人氏名変更
原   因 令和 年 月 日相続人不存在
変更後の事項  亡(被相続人)相続財産
申 請 人 亡(被相続人)相続財産清算人 甲
添付書類   登記原因証明情報 代理権限証書


登記原因証明情報は
・被相続人の一生分(出生~死亡)までの戸籍謄本
 *被相続人の死亡や法定相続人が存在しないことを証明します
代理権限証書として
・相続財産清算人を家庭裁判所が選任した審判書や相続財産清算人の委任状


これは被相続人の財産を承継する自然人の相続人がいないため、被相続人の相続財産が宙に浮いた状態になります。
このため、被相続人の相続財産に株式会社などのような法人格に近いものを与え、次の特別縁故者への所有権移転登記を可能にするために必要になります。

 

2件目・・・特別縁故者に対する所有権移転登記

 

特別縁故者への財産分与は、相続財産清算人の審判とは別個のものとして、、特別縁故者への財産分与が認められた場合に、その審判所が家庭裁判所から交付されます。

審判発行日から確定するまで14日間を要しますので、特別縁故者への相続財産の分与の日は、審判から14日後の確定日となり、これが所有権移転登記の登記原因日付となります。
このため登記の申請のためにも確定証明書を取っておく必要があります。

この所有権移転登記の登記原因は、「年月日民法第958条の3の審判」(年月日が審判確定日となります)。

 

登記の目的 所有権移転
原   因 令和 年 月 日民法第958条の3の審判
権 利 者 (特別縁故者の)住所氏名
義 務 者 亡A相続財産 
添付書類   登記原因証明情報 住所証明情報 代理権限証書

 


登記原因証明情報は
・特別縁故者への財産分与を記載した審判所正本と確定証明書

代理権限証書として
・特別縁故者の委任状

住所証明情報として住民票
・特別縁故者の住民票

が必要となります

所有権移転登記なので共同申請の形になりますが、実際は特別縁故者の単独申請とするため、登記義務者の書類は不要です。そもそも相続財産が便宜的に義務者になっているだけなので、印鑑証明書などの添付のしようがありません。

 

特別縁故者に対する相続財産分与の申立書 | 裁判所 (courts.go.jp)

実質は判決による単独申請です。

 


しかし、私も含めてこの登記の申請は形式は知っていますが、実務で取り扱ったことは今のところありません。

それほど特別縁故者への財産分与、またこれが家庭裁判所で認められるのは稀なことである証左といえるでしょう。

この点は次回にまた解説したいと思います。

 

 

 

このページの執筆者 司法書士 近藤 崇

司法書士法人近藤事務所ウェブサイト:http://www.yokohama-isan.com/
孤独死110番:http://www.yokohama-isan.com/kodokushi

横浜市出身。私立麻布高校、横浜国立大学経営学部卒業。平成26年横浜市で司法書士事務所開設。平成30年に司法書士法人近藤事務所に法人化。

取扱い業務は相続全般、ベンチャー企業の商業登記法務など。相続分野では「孤独死」や「独居死」などで、空き家となってしまう不動産の取扱いが年々増加している事から「孤独死110番」を開設し、相談にあたっている。

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